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仮面ライダージオウ 第34話「2019:ヘイセイのオニ…
仮面ライダージオウ 第34話「2019:ヘイセイのオニ、レイワのオニ」
英語に Life goes on という慣用句があります。
仮面ライダーではオーズのOP『Anything Goes!』でも歌われてますが
(Life goes on! 本気出して戦うのなら……)
『それでも人生は続く』あるいは同作本編を締めた『旅はまだ途中』『大丈夫、明日はいつだって空白』といった意味なのですが、まさにそんな印象の響鬼と京介のエピローグ。
視聴者も作りても番組外の事情に振り回された響鬼ですが、本編の話はオロチという、特に忙しい時期を焦点とした一年間の鬼のドキュメンタリーなんですよね。
本編の後も魔化魍は現れ続け、鬼たちは弟子たちを鍛え、戦い続けている……ジオウ本編に魔化魍は一切出ていないのですが、しっとりと番組を振り替えさせられるいぶし銀の一編でした。
オーズの後藤ちゃんにも似たところありますよね、京介。変にプライド高くて、それを捨てられないって。
◆自分の弟子の不始末は師匠がつける……それが鬼の掟だ
トドロキ君がキッツイこというのは鬼を継げなかったせいでなくて、そっちの問題か!
しれっと裏設定が特に解説もなくでてますが、まぁ考えれば当たり前の話……軍隊でいう脱柵(脱走)のようなもので
- 自分の弟子が鬼の力を乱用した場合、師匠が責任をもって止めなければならない。場合によっては抹殺してでも
- 吉野の猛士本部には憲兵(MP)に相当する対鬼の専門の鬼『鬼祓い』がおり、最悪は彼らが始末をつける
そもそも猛士という組織はある鬼の暴走に端を発しているわけで、迫害や暴発を防ぐ倫理教育は勿論、暴走した場合の備えがあるのはある意味当然。
で、そいつらがやってこないのは……トドロキ君が頑張ってたんでしょうね。
彼の師匠である、かつてのザンキさんのように。
◆私は『祝う』とは何か、わからなくなってしまった
なんのギャグだと思いましたけどウォズ……実際マネしてみてわかったんですけど、『祝う』ってすごい楽しい。
ほら、ほろ酔いのおっちゃんにーちゃんが『カンパーイ!』って一人でやってたりするじゃないですか。
アレに近いノリで、デカい声上げることが楽しい、祝辞を考えるのが楽しい、注目されるのが楽しい、曲がりなりにもポシティブな内容なので悪く思われることもないし……麻薬じみてます、コレ。
自分の敬愛する主人のためとあれば猶の事……何のために祝うのか、誰のための祝いなのか。
◆目を醒ませツトム! 鬼の誇りを思い出すんだ!
翻って京介。
冒頭で後藤ちゃんに似てると話しましたけど、まさに5103
ロケットランチャーこそ飛んでこないですけど、半端な必死さが邪魔にしかなってないのは、本当に彼の空回りが被ります。
ソウゴ君の
古き友は言った。
君の欲望はいつも
◆傍にいるって、それだけで凄いことじゃないですか
迷えるウォズと、更に弟子を渋るトドロキ君にも、いっちょ弟子修行してみっか! とグイグイ押していけるのがソウゴ君の王の器。
この魔王、最近まで友達いなかった癖に(禁句)、一人ではどうにもならないって時を見極めて、そういうのにだけスッと手を貸してくるのが……原点見直してこい、ってことですよね。今回の場合。
そのウォズの原点……なんでウォズは祝うの? 予言者なの? という話題でよくあがっている一説ですが
『オーマジオウがウォズを祝福したから』
というのが、割と有力なのではないかと思います。
序盤の方がはっきり言ってますが、ウォズが祝うのは『継承の儀』つまり洗礼。
そして(宗派ごとの背景は別として)洗礼の社会的意味は
『お前はここにいていいんだよ』
『今まで色々あったけど、お前を受け入れるよ』
という社会からの承認、自己の肯定にあります。
(前回、ツクヨミに『お前の祝福は偽物だ!』と言われてズガーン! となっていたのはギャグでもなんでもないのです……)
恐らくオーマジオウとの馴れ初めは
『俺はお前を祝福する。お前も誰かを祝ってやれ』
と、ざっくりこんな感じではないかと。
ザンキさんへの押しかけ弟子だったトドロキ君も、また似たような所があって
(魔化魍との戦いを見て、身一つで押しかけたという話。『お前なんか面倒見れないよ』とザンキさんが言ってしまえば、それまでだったわけで)
師弟と主従。形は違えど二人には共感できる部分があったのではないかでしょうか。
◆ツトムにとってはアンタが響鬼だったんだ
翻って、京介の話。
東映公式での引退説、響鬼本編、今回の京介の話と先代ヒビキ(日高さん)の現状は悲観的になってしまいますが……多分、健在でも京介の力になれない。
ヒビキさんがというか、京介の側の問題というか……彼、性根は地獄兄弟に近いんですよね。
ただでさえヒビキさんは独学で鬼まで至ってしまったという不世出の天才。
そんな彼から『お前ならやれる』『よくやっている』といった言葉をもらっても、『そんな気遣いみたいな励まし!』となってしまう。
地獄兄貴が言う所の『俺たちのような日陰者に太陽の輝きは眩しすぎる』状態になってしまう。
(更に悪いことにヒビキさんは、こんなストレートな言葉遣いはしてくれない……できない人なので)
それを乗り越えるにはトドロキ君も言う通り『己を鍛え、己に打ち勝つ』しかなくて、それを為せたのは見栄からといえ師匠という立場を与えてくれたツトムだったと。
……まとめてみると、京介の不幸は最初の師匠がヒビキさんだったことなんじゃ(禁句)
京介の今回得たものは、後輩や弟弟子がいれば段階的に学んでいけるのでしょうけど……ヒビキさん、京介後の弟子とか絶対とってないよね。
(下手するとツトムもヒビキさんが京介に世話ぶん投げた可能性が……)
◆祝え、新たなる響鬼の誕生を!
アギト編では待ってました! のレジェンド変身ですが、今回は『そう来たか』と唸らされる使い方。
ここで思い出していただきたいのはアナザーライダーの設定……シノビあたりから曖昧になってますが
『資格がないものが変身しようとするとアナザーライダーに変身してしまう』
音叉を使わず、ライドウォッチで変身して、京介はアナザーではない響鬼になれた。
新たな響鬼として世界が認めたともとれるし、ライドウォッチの力と奇跡による一時的な変身ともとれる。
複雑な番組外の事情を考慮した、視聴者の判断に任せるような描写と、無言で語る響鬼のスタイルが上手いこと融合してくれて……今回ばかりは『よくやった』より『よく頑張ってくださった』とスタッフをねぎらいたい気持ちです。
『え゛っ』て声に出す人初めて見たわー……これだから我が魔王はさぁ!?
◆俺は俺の道をいく
十余年、長い日々でしたが……祝え、新たな京介の出発を。
そして……感謝と黙祷を。
立花 日菜佳役を務められた神戸みゆきさん……響鬼の完結からわずか2年、24歳の若さでの急逝は当時ショックでした。
ですが、まだ響鬼の世界には日菜佳さんとして生きてられる、皆の心の中にいる……伝えてくれた製作陣の皆さま、トドロキ役の川口真五さん、ありがとうございました。
かくして祝福は為された。残されたウォッチは3つ……
しかし、常盤ソウゴには別の意味の試練が待っている……
古き王は言った。
代表作とは言いません。むしろ異色作。というか問題作。
それも、歴史の風雪に耐えてしまう級の――
待って……ちょっと……なにぶん投げ宣言してるのプロデューサー!?
その人たちの鎖はウェイクアップしちゃダメd