MachineWalkerTRPG 〜World Side〜
「がぁぁっ!このクソやろぉ!!」
操手席に火花が飛び散り、計器は狂ったように不協和音をあげる。
鋼鉄のキャノピーを掠める振動ナイフに、俺は目の前のスティンガー野郎へ怨嗟を叫んだ。
人が見つけた遺跡の横取りを狙うような連中だ、ロクでもねぇ野郎とは思ってたが……。
助けを請える相手はいない。俺は渾身の力をレバーにこめ、目の前の敵を引き剥がした。
周囲は既に乱戦。殴り倒される味方の重機の姿が視界の端に映り、無線は始終、悲鳴と叫びを伝達してくる。
(こんな所でやられてたまるか……俺たちだって死線を渡ってきたベテランだぜ……)
ここは中部の真っ只中、巨大なる先住者の遺跡を硝煙が燻しあげる武装地帯。
富も、名声も、女も、栄光も、死も、恐怖も、屈辱も……この荒れ果てた世界には全てが眠っている。
選ぶ権利をもつのはいつの時代も勝者だけだ。もちろん俺は、敗者になる気なんてさらさらない。
「だからなぁ!俺はいつだって、負けねぇんだよ!!」
叫びと共に、俺は突っ込んでくるスティンガーのどてっぱらへとパイルバンカーを叩き込んだ……
武装地帯はディサイリシュ連合とガティア公国を隔てる、無法地帯と化した広大な荒野地域です。
一見すると何もないこの荒野には多くの巨大な遺跡が点在しており、
何時の頃からか集まったトレジャーたちの手で無秩序な発展を遂げていきました。
現在の武装地帯は開拓時代の西部にも似た雰囲気をもつ…栄光と抗争に彩られた無法地帯です。
未だ近代法制に行き届かないアウトローたちの溜まり場であり、比較的自由な活動ができるため、
はじめはこの地域周辺を舞台としてみるのがいいでしょう。
生活・文化
硝煙と瓦礫の漂う荒野の中、点々と小さな街と遺跡が存在します。
イメージ的には西部劇に登場する開拓街や中東の小村が近いでしょう。
多くの街は遺跡発掘のベースキャンプや宿場町が発展したもので、ライフラインや情報網の安定した供給は望めません。
街外れには必ず防護柵や空堀、防衛用の固定火器などが置かれ、ならず者への自衛策を取っているのが普通です。
多くの街はトレジャーやガード、旅人ののもたらす富によって成り立っており、
整備施設・操手の憩いの場である酒場、トレジャーズギルドなど操手向けのが所狭しと並んでいます。
明日も知れぬ武装地帯の治安がそうさせるのか住民の多くは刹那的で今日を楽しむことを重んじており、
どこにいっても(質はともかく)酒類や大人の遊びなど街での娯楽には不自由しないでしょう。
また住民の多くはトレジャー等MW操手やMWが傍にある生活が当り前となっています。
他の地域ほど色眼鏡で見られることはありませんが、逆に変に特別扱いされる期待もすることはできません。
衣食住
衣食は少ないものを大勢で利用できるように加工した、中東的な雰囲気のものが主流です。
材料は自給自足の貧しいものと、外から交易商が持ち込む贅沢品が半々ほど。
交易商も訪れないような危険地域では痩せた土地でも収穫できるまずい小麦を、
貴重な水のかわりに酒で料理した劣悪な平パンや麦粥が常食となります。
もっとも最近はそこまでひどい所は少なくなってきており、
ちょっと値を張るもののパンと水、肉くらいは普通に確保できる街が殆どでしょう。
治安レベルと保安組織
文字通りの無政府地帯であり、法律や取り締まり人による保安は一切通用しません。
街にはいれば支配者層の私兵が一応の治安を形作ってはいますが、
MW戦など町全体を巻き込む規模の事態や、支配者の懐を痛めるような事にでもならなければまず動く事はありません。
街の治安を一言で表すなら「死人がでなければ今日はとてもいい日」というところでしょう。
グランドホールなど比較的大きな街の中には熱心に保安に取り組むところももありますが、
そういう所でも手が足りなくなると、そこらへんのトレジャーやガードに捜査を丸投げする事がままあります。
MWと操手
武装地帯には遺跡探索を主とするトレジャーとそれを護衛するガードが星の数ほど存在します。
ここで活躍するトレジャーたちは生身での危険も多いため、何らかの戦闘技能も持っていることが多いでしょう。
MWは操手の趣味と現実にあわせ殆ど全ての機種が雑多に存在します。
なかには巨神教団のガーディアンMWや操手手製のレストア機など、規格外機が見かけられたり、
各国のMW開発会社が内密にテストしている実験機や試作機のようなものがあったりすることもあります。
武装地帯は一面の荒野と思われていますが一部には低木の森林地帯や草原が見られ、地形的な起伏にも富んでいます。
ときに見受けられるm平原の真ん中にぽつんとたつ山や唐突な断崖など不自然な地形は付近に遺跡が眠っている事が多く、
このような地形・未探査地域の情報は高値で情報屋たちに取引されます。
グランドホール(遺跡)
武装地帯のほぼ中央に位置する巨大な地下遺跡です。
発見されたのは数十年前ですが未だ制覇したものはなく、今では周囲にトレジャー目当ての街までできあがり、
ちょっとした規模の経済地域にまでなっています。周辺市街については『グランドホール(街)』を参照ください。
これら市街は周辺だけに留まらず、最近では発掘し尽くされた浅層部までスラム地区のようになってきています。
内部は名の通り『巨大な縦穴(ホール)』状の特異な形状をしており、
シャッターで何層にも区切られた内縁部から、更に広大な地下遺跡が外縁部に広がっています。
シャッターは外縁部に設置された装置で制御され、この数十年で多くのものが解除されてきましたが、
いまだ底は見えず様々な憶測が流れる中、多数のトレジャーが探索を続けています。
グランドホール(街)
グランドホールを中心として円状に広がる、武装地帯で1,2を争う規模の街です。
形成当初は無目的に乱雑な発展を遂げてきましたが、現在は有力トレジャーや商人達が名目上の統治を行っています。
遺跡に潜るトレジャーたちのベースキャンプより発展した街であり、
彼ら向けの施設や歓楽街、取引を行う商人の姿を多く見ることができます。
その規模から武装地帯では珍しくライフライン整備も行き届いており比較的安全な地域といえるでしょう。
(それでも治安は死人がでなければよい程度であり、ネットワークは日に数度の切断が当り前の環境ですが……)
"孤狼"の向かう先
出自に謎の多い武装地帯のトレジャーの中でもトップクラスの有名人"孤狼"ヴェイオウルフ。
何故か単独行動を好む彼の行動には謎も多く、遺跡の深部で助けられたという話や、
賞金首を横取りされたというような話が幾つも聞かれています。
彼の目的は何なのか?そもそも彼は一体何者なのか?
調べていくうち、待っているものは意外な真相かもしれません。
遺跡探索人と巨神教団
神たる巨人の住居を荒らす事を嫌う巨神教団。
彼らは当然の如く無数の遺跡が眠る武装地帯を本拠とし、今日もトレジャーたちと激しい抗争を繰り広げています。
彼らの本拠は武装地帯の遺跡とされていますが、それを偶然トレジャーたちが見つけてしまったら?
あるいは教団の秘密を知った探索人や元教団員が助けを求めてくる事もあるかもしれません。