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 夕日がおち、夜の帳がキャンプを包む。月明かりの下、自由民たちは黙々と戦闘の後処理へと従事していた。崩れ落ちたテントの復旧、手の施しようがない建造物・奇声蟲の残骸の撤去、そして犠牲者への『処置』も。

「やれやれ……こいつぁ、ひでぇな」

 粉砕された木片を彼方にほおり投げながらナインは呟く。結局、マナを倒壊したテントから助け出し、鴎たちの危機を救ったあともナインはキャンプへと留まっていた。自らを拉致監禁した敵であっても、犠牲者の友人たちが泣きながら彼女たちに慈悲を与えていく姿はあまりにやるせない。

「ナインさん……」

「かもめか。二人の様子はどうだ?」

 キャンプを抜け出さなかったもう一つの理由が、これだ。戦闘の中、メーヴェの避難を促そうとしたナインは、偶然にも残骸に貫かれ半死半生であったダーリエを助け出していた。ほおっておくわけにも行かない手前、救護班へと届けに言ったナインはていよく捕まり、今まで奴隷のように使い倒されているというわけだ。

「メーヴェさんは、今救護班のところで治療受けてるけど、まだ大丈夫だって……けど……けど、ダーリエさんは……」

「……そうか」

 泣き出しそうな鴎の顔をみて、ナインは具合を悟った。あれだけの怪我を負い、炎にまでまかれかけたのだ。戦う事はもちろん、顔や身体とて無事ではすむまい。

「……ナインさん」

「ん?」

 てっきり後悔を口にして泣き言を言い出すのかと思っていたナインは、鴎の何かを秘めた口調に慌てて叱咤と慰めの言葉を飲み込んだ。

「おれ、決めました……ダーリエさんは、メーヴェさんを守って、ああなったんだ……おれが、もっと早く気づいてりゃ、おれが戦えれば、ダーリエさんは無事だったのかもしれないし、殺された、歌姫の人たちだって……」

「別にありゃお前のせいじゃ……いや。……それで、どうするんだ?」

「おれ、戦います。ダーリエさんのかわりに、メーヴェさんを守ってみせます!」

「そーか。だが、それを言う相手は俺じゃないぞ?なぁ、技師長?」

 ナインは自分たちを見つめる、もう一人の視線の主に気がついていた。少年の宿縁へと声をかけると、キャンプを救った影の英雄は用済みとばかりにその場を後にする。

「メーヴェ、さん……聞いてたんですか……」

「ついさっきよ……カモメ……わかっているの?わたしたちは……」

「知ってる。別に、仲間でなくてもいい、利用するだけするつもりでも、実験台でもいいんだ。……どうせ、死ぬかもしれないなら、誰かのためになって死にたい!」

 鴎の叫びに、傷だらけの歌姫は微笑み、右手を差し出した。瞳には、僅かに涙。

「わたしは……弱い人間よね……ありがとう、カモメ……これから、よろしく」

 男女の手がしっかりと握り合わされる。機奏英雄と自由民の歌姫、一見矛盾する二人の長い旅が始まろうとしていた。

To be continued…

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